常識覆す「肉抜き」フランス料理

 パリの三ツ星最高級レストランで、日本人に最も人気がある店のひとつ「アルページュ」のシェフ、アラン・パッサール氏(46)がメニューからすべての肉類を排除し、グルメを仰天させている。
 一月に全面変更したメニューは前菜からメーンまで肉類は一切なしで、基本は野菜。多少の魚介類は付け合せに使う。「カブと黒ラディッシュとキャベツの黒トリュフ・パルメザンソース添え」など見慣れない料理が並ぶ。
 欧州では狂牛病騒動が広がり、牛肉は食の主役から降りた感がある。「肉を使わない料理は二年ほど前から考えていた。もう肉類からインスピレーションはわかない。」食文化の変化は肉抜きの決断を速めた側面もあるだろう。
 十六歳から仏でレストランを渡り歩き、一九八六年にアルページュを開店。九六年にミシュランガイドで三ツ星を獲得、料理界の最高峰に。同ガイドの新刊が三月に出るが、「職人が恐れねばならないのは星を失うことより、挑戦の志を失うことだろう」。
 新境地開拓への意気込みは強い。「野菜には葉や茎や豆や根がある。それを燻(いぶ)したり焼いたりワイン蒸しにもできる」。野菜は地方の農家から直接仕入れている。肉抜き後も客足にも変わりはなく、「野菜を楽しみたいというのはむしろ顧客の思い」との印象を抱いている。
 フランス料理に肉は欠かせないというのがこれまでの常識。ただ「フランス料理は三百年間、野菜への取り組みを怠った」と語る。自らについても「それをさぼった私の三十年のシェフ人生も間違っていた」と覚悟がにじんでいる。

(提供 KITAJIさん)

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